保留

美和

保留なのでね

この話は無かったことに、という訳ではない


私、重く受け止めなければならないな


この度は私を嫌いになった訳ではなく、一人で暮らすことを望んでいるということで

私との同棲を解消したいとの申し出だったのだけど

私のこと今までと同じように愛していてくれたならこんな酷いこと言わないと思う


一緒に暮らすことで

愛情より情が勝ってきたと言っていて

それが彼にとっての大切な部分のよう

もうひとつ、不倫関係のいいとこ取りが良かったとも


私に原因はないと言うけれど

二人で作り上げる生活なわけで

熟年夫婦のような感じではあったのかも

それは反省だな


私、彼が変わらず優しく愛情たっぷりに接していてくれたから全く気づかずにいたのね

それは彼が私と揉めたくないととても努力してくれていたんだと思う

一足飛びに別れ話になっちゃって

私としてはなぜ不満を言ってくれなかった?と思ったけど

今思うとそれが彼の男らしさなような気がする

それは彼の気質なのだし責めるつもりはない


けして楽観してはいないけど

色仕掛けで考えを柔らかくしてくれたのは助かった

私の働きかけで彼は考え直すかもしれないと見通しが明るくなった


私が思い描いていた

離婚したら彼と暮らして死ぬまで一緒にいる

それは不倫関係だった時の浮ついた夢に過ぎず

ここからがスタート

彼への愛情を更に育てたいと思うし

逆に本当に人生を預けて良いのかもう一度考えるいいきっかけになったとも思う


彼も私も

配偶者を騙してきたペテン師

そこも忘れちゃいけない


でも

彼との関係は本物だって思ってたから

今回のようなトラブルを乗り越えられれば

より固い絆になるだろう

その後

美和

あの後、夜中に仕事から帰ってきた彼

ご飯いっぱい作ってサッポロクラシック用意して裸にエプロンしておかえりなさいしたの


生きてたね、だって。

えー死なないよ、って言った

死んでたらどうすんの?に

大変なことになるよね、だって


彼の前では言わなかったけど

死にたいくらいに辛いって思ったわ

でもね、今まで死んだほうがマシって何度も思って

でもそれはもったいないし、私きっと上手くいくって謎の自信があるんだよね


何となく、彼は思い直してくれるんじゃないかとそんな予感がしてて

泣けて泣けて困ったけど

どこかで自分を俯瞰してるようなそんな感覚もあって

そこまで困ってないのかも私


鬱になるのだけは嫌だな、なんて考えたりしてた

そうなったらほんと息子達に申し訳なさ過ぎるから

そしたら死ぬこと考える


そんな気持ちで彼を迎えたの

ご馳走だね、って喜んでビール飲みながら肉巻きやお煮しめやナスの揚出しなんかを食べて


私はその日全く食べられなかったから1.5㌔減ってたわ

ここのところ走れてなくて体重増えてたからある意味助かった


そろそろ寝るかってなって

エッチしよ?って誘ったんだけど

昨日したから今日はいいって断られた

彼が断るのは金輪際初めて

ものすごくエッチが好きな人なのだ

それを断ってきたんだから

これ本気で私を拒むつもりだ


もうさ、TVで流れるイチゴ狩りとかマラソン大会とか見て思い出が押し寄せてきてその度に涙が出てきて参った


ポロポロ涙を流しながら一緒に寝てもいいですか、って聞いて

もちろんだよって彼


私からいっぱいキスしていっぱい気持ちよくなるように御奉仕した

ほんとに彼の気持ちに寄り添いたいって思って

まずは大好きなエッチで満足した気持ちになって私がいないとダメだった、って思い出してもらいたい


私、彼を追いかけたことが一度もなかったことに気がついた

彼がずっと私を追いかけて私に近づこうとしてくれてて

マラソン始めたりピアノを私に習ったりしてくれたんだよね

私が一番大切にしてることを自分がやって、より私に近づこうと努力してくれたの

ほんとに愛情を感じていたの


一緒に暮らし始めて毎度求められても

面倒くさそうにしたり断ったりしてた私

エッチがそこまで好きじゃない私

彼はそこはわかってるとは言ってくれてたけど

彼にとっての比重の高いものがエッチだったりするから

私も彼に寄り添うという意味ではエッチを頑張らないといけないんだと改めて思った


でね。

結局彼は私を抱きました。

そして…

私の色仕掛けに落ちてくださいまして


保留、ということになりました

泣けるわ

美和

うーん困ったな

涙が勝手に出てくるな

彼が帰ってくるのは0時過ぎ

それまでに肉巻きを作ることにしてる

彼は楽しみにしてるねって言ってたの

私が出ていくまで今まで通りに暮らそうって

ありがたい

ありがたいけど

私泣かずにいられるのかな

泣いたら彼は困るよね

困らせたくない

彼を幸せにするのは私なんだと

これからは私が幸せにしてあげるんだって思ってたんだ

私が身を引くことが彼にとっての幸せならばそうしてあげるのが愛なんだろうな

でも辛いよ

やっと離婚できてこれで堂々と恋人同士が出来るってなった矢先の事でしょ

彼のいいとこ取りが良かったってのも分からなくはない

分からなくはないけど

結婚も離婚も経験してるのに今更

想像できたでしょ

ひどいな

ひどいけど彼を手放したくないよ

私を手放さないって言ってたのに

何度も何度も言ってたのに

過去の彼の言動に縛られちゃダメだけど

気持ちが追いつかない

彼を責めそうになるけどそれは耐えて

ああ、彼が帰ってきたら

さっきのは嘘だよごめんね

これからも仲良くやっていこうね

そんなふうに言ってくれないかな